■ストーリー+解説:
58歳になるアイツァオは、夫を亡くして以来、女手一つで子供たちを育ててきた。しかし、いい歳になっても結婚に興味のない息子、留学先のフランスから帰国してきたシングルマザーの娘、お金にがめつい母親との関係に心休まらず…。
台湾の公共放送、Public Television Service(PTS)では、ゲイを真っ向から扱った革新的なドラマシリーズ『ニエズ』が放映されたほか、毎回良質なTV映画を放映する「人生劇展」でも、セクシュアル・マイノリティを扱った作品が多数放映されている。今回のAQFFセレクションでは、そのPTSにスポットを当て、「人生劇展」シリーズから名作ドラマ『 蓬(よもぎ) の花』を上映する。『 蓬(よもぎ) の花』は、世代間に横たわる価値観の違いに悩む“母親”の物語。人生に必要な愛情と寛容さを教えてくれる感動作である。
ゲイの息子役を『遠い道のり』、『一年の初め』のモー・ズーイーが、その恋人役を『チョコレート・ラップ』、『ゴー!ゴー!Gボーイズ!』(AQFF2007で上映)のジェン・カン・タンが演じたことでも話題となった。
■ 監督の言葉:
『蓬(よもぎ)の花』は、演技スタイルも経験も異なる俳優が集まって完成した作品です。演出する際の課題は、そんなバラバラな俳優たちを調和の取れた1つの集団へとまとめていくことでした。そうすることで、登場人物の日常や性格を鮮やかに描き出せるだけでなく、脚本に描かれた人物が実在する人物としてスクリーン上で動きだすのです。
キャスティングの際には、俳優本人の個性と映画にもたらす雰囲気を大事にしました。主人公の母と孫を演じた二人には、過去に演技の経験がありません。撮影現場では彼らが自然に振る舞えるような雰囲気作りを心がけました。場面の状況を説明するときには、俳優たちが安心できるように、率直でシンプルな言葉を使ったので、嘘のない魅力的な演技が引き出せました。ベテランの俳優たちもすばらしい演技を見せています。
俳優がじっくりと役を理解し、いったん撮影現場になじむと、彼らの演技は力強く説得力を増します。主人公を演じた女優がそれをうまく表現しています。「まだ熟れる前の若いショウガもおいしいけれど、熟したショウガの方が味わいがある」と。また以前は、見た目のいい俳優を起用することをためらっていました。顔の良さが邪魔をして、物語に真実味がなくなることを恐れたのです。ですが、この作品で起用した二人の青年はうまく役の内面を表現してくれたお陰で、彼らの見た目の良さがさらに演技を引き立てました。
リアルな脚本を効果的に映像化するには、出来事や登場人物をありのまま描くことが重要です。リアルさが映像に表現されていれば、観客は登場人物の人生を身近に感じ、共感できるのです。